「愛情」とは
「愛情(あいじょう)」とは、「相手のことを愛おしく大切に思う気持ち」や、「異性などに対して恋する気持ち」を表す言葉です。
「愛情」は、愛する対象に向けられる行為ですが、対象となるのはかなり広く、人間だけでなく生物、更には「仕事、音楽、場所」などのような物事も入ります。
- 私の父はめったに愛情を表すことはしなかったが、大変愛情深い人だった。
- サルの母親は自分の子どもにたっぷりの愛情を注いだ。
- 彼はその曲で故郷への愛情を表現していた。
- 二人の間には愛情が芽生え始めていた。
などのように使われます。
「愛情」は、「深く愛し、いつくしむ心」や「愛おしく思うこと」といった意味を持ち、対象に対して愛する気持ちを持っているときに使う言葉です。
つまり、「愛情」は恋愛感情のみならず、愛する気持ちを持っていると本人が実感しているときに使うことができるのです。
「愛情」の類義語には、「情愛」「慈愛」「仁愛(じんあい)」などがあります。
「愛情」の対義語は、相手に対してマイナス感情を持つことなので、「増悪(ぞうお)」や「憎しみ」、「報復」があげられます。
「愛情」の使い方




「愛情」の例文
- ・・・とにかく生き方において不器用なのだ。 しかしながら…というところで、家族への愛情とか、自然と共存する生活といったものが描かれていたように思う。 ところが、最終回・・・林 信吾(著)「これでもイギリスが好きですか?」
- ・・・談相手でもあった。互いに誰よりも親しい関係であり、そして、お互い、誰よりも純粋な愛情を持っていることを知っていた。 けれども、その役員戦の際、オリヴァーは他の派閥の・・・かわい 有美子(著)「水に映った月」
- ・・・かと相手を恨む。 親類とのつきあい方ぐらいむずかしいものはない。つかず離れず、愛情はもっていても淡々とつきあうのがいちばんではないだろうか。 相手を兄妹、姉弟と思・・・下重 暁子(著)「女が30代にやっておきたいこと」
- ・・・はこう記している。「早くからルドルフが理解したのは、認めてもらうのに、また父の愛情を勝ち得るのに一番確実な道は、抜きん出た狩人になることであるということであった・・・ゲルハルト・ロート(著)/ 須永 恆雄(訳)「ウィーンの内部への旅」
「愛情」「愛」「依存」「執着」の違いは?

「愛情」「愛」「依存」「愛着」「執着」のそれぞれの違いを見ていきましょう。
「愛情」は、大切な対象を「深く愛し」「いとおしく大切に思う」気持ちを表す言葉で、対象に対して愛する気持ちを持っているときに使う言葉です。
一方の「愛」は、「切ない気持ちで足の進まない」姿を表した漢字ですが、現代における「愛」は「心がひきつけられる、慕う」「いつくしむ」「可愛がる」といった何かを思いやる心を表現するための言葉とされています。
ところで、「愛」にまつわる話として、明治の文豪・夏目漱石が英語教師をしている際に、学生に対し「I love you」を「『月がきれいですね』と訳しなさい。日本人にはそれで通じる」と言ったとする逸話があります。
もちろん、「愛」という漢字は仏教伝来とともに日本に入って来ていましたから、学生は「われ君を愛す」と訳したようですが、日本人は「love」の心情をもっと繊細に表現できるはず、という文豪らしい逸話です。
「愛」という心情を表現するのは難しいのですが、むしろ大切な物や人が出来た時に、その感情や心もちを「愛」というのだと実感するものかもしれません。
一方、宗教においては明確な定義があり、 キリスト教で「愛」とは、神が人類に幸福を与えることであり、「見返りを求めず限りなく深くいつくしむこと」を意味します。
仏教用語としての「愛」は煩悩の一つです。そのため、仏教では「愛」を否定し、「愛を離れること」が理想とされていました。
「愛情」と「愛」には、「いつくしむ心」「特定の相手をいとおしく思う心」という、共通する意味があります。
そして、「愛情」は、愛する対象に向けられる行為ですから、具体的な対象があり、それは人や生物、仕事などかなり広く、対象に対して愛する気持ちを持っているときに使います。
一方、「愛」の使い方は、「人類愛」「郷土愛」のような、抽象的な対象に向けた深くあたたかい心を意味するときにも使えます。つまり、「愛」は目の前にある人や事物から観念的なものにまで、非常に広く使えるのです。
「愛」の例
- ・・・通常一般の人間ならば愛するものの不在によって、嫉妬がかきたてられたにせよ、そこに愛するものの愛を信じようとして、その嫉妬の情をストレートには認めないだろう。そこに・・・清水 孝純(著)「新たなる出発」
- ・・・う。この愛は努めず巧まずしておのずからになる愛であり、愛に居らざる愛である。この愛の前には親子の区別がなく、親は子のために尽くすのが己れのためと同じく、自らのため・・・河合 栄治郎(著)「学生に与う」
- ・・・の少女がアメリカ留学に出発する光景となる。物語はヘブライ語とアラブ語で歌われる人類愛の謳歌のうちに大団円を迎えるかに思われる、ととつぜん彼ら三人を乗せたトラックは地・・・篠田 浩一郎(著)「閉ざされた時空 ナチ強制収容所の文学」
「依存」は、「あるものに頼らないといられない状態のこと」を意味し、あるものに頼り過ぎるあまりに、「それが欠けると機能しなくなる」「それがないと不安でいられなくなる」時にも使います。
「依存」は他を頼って自分を保っている状態に使われる言葉ですが、その頼る対象は人だけではなく、あらゆるものに対して使われます。
イメージしやすい例では、スマホやオンラインゲーム、SNSに対しての依存が挙げられます。
ゲームを止められず昼夜逆転し日常生活や人間関係に影響する「依存症」になることも少なくありません。
また、恋愛においては相手への好意の感情から「依存」に陥ってしまうケースもあります。
例えば、LINEが来なくなると心配し、LINEが来ると安心するという繰り返しで四六時中LINEをしていないと不安になっているような状態はおそらく、愛情ではなく依存でしょう。
「愛情」と「依存」はどちらも特定の対象に対する強い思いのある感情を表しますが、対象との関係性に違いがあります。
「愛情」は、相手を深く愛し、「いつくしみ、愛おしく思うこと」といった意味を持ち、愛する気持ちが相手にむいているときに使う言葉です。
例えば、目の前にその存在が居なくても自分の判断で行動できます。
一方、「依存」は、あるものに頼っている状態で、それが欠けると自分が機能しなくなる、つまり、自身の感情や行動の判断さえも自分以外の対象に頼りきっている関係性を表しています。
ですから、その存在がなくなると、自分の生活や精神状態、存在さえも危うくなる可能性があります。
なお「依存」は、「いそん」と読みますが、現在では「いぞん」と読む人が多くなり、国語辞典にも「いぞん」と記載されているものも多くなってきています。
「依存」の例
- ・・・ス利用者すべてが適切に自己決定や選択ができるかというと,そのような状況ではない。依存的で自己決定に慣れていない人や自己決定をしてはいけないと思っている人,判断能力が・・・山口 光治(著)「新社会福祉援助の共通基盤」
- ・・・問題も増幅され、「依存との戦い」は非常に厳しいものとなります。 クスリをやめれば依存症状から解放されるのは事実です。しかしまた手を出してしまうのも事実なのです。薬物・・・千葉 紘子(著)「あした、青空 少年院の少女たち」
- ・・・今は半分以上がベンチャーを起こしたり、民間企業に人生を求めている。 また、組織に依存しなくても生きていけるスキルや高度な技術を持った人材を養成するスペシャリスト養成・・・落合 信彦(著)「勇気の時代」
「愛着(あいちゃく)」は、「慣れ親しんだものに深く心をひかれ、離れがたく感じる気持ちのこと」を意味します。
それは、短期ではなくある程度の期間使ったり接したりすることで、相手や対象物に心をひかれるようになり、手放したくない、離れがたいと思う状態であることを指します。
例えば、小さい頃からずっと手元に置いていたぬいぐるみが「いとおしくて手放せない」状態に「このぬいぐるみには特別な愛着があるから捨てられない」と使います。
一方、仏教用語としての「愛着」は「あいじゃく」と読み、欲望にとらわれて離れられないことを意味し、修行の妨げになる悪い意味として使われていました。
「愛情」と「愛着」はどちらも特定の対象に対して愛する感情がある点は共通していますが、「愛着」は長い関係性を経て好意を持つようになり離れたくないという感情が生まれてきます。
そのために、時に「愛着」はこだわり過ぎるネガティブな意味として使われることがあります。
「愛着」の例
- ・・・にみえるなかに庶民のしたたかな知恵があふれ、ユーモアがあり、希望があり、郷土への愛着が深い。それは敗戦日本のなかで、鬱々と生きる人々の心をつかんだ。「思想の文学」で・・・嵐山 光三郎(著)「文人暴食」
- ・・・だろう。たぶん街にたいする、いや街とはかぎらない、とにかく命のありようにたいする愛着のなさだろうか。つまりこの世は仮の宿であり、仮の宿ならその道を覚えたって仕方がな・・・なかにし 礼(著)「道化師の楽屋」
- ・・・“喪家の狗”となった粕造の体験とそれは酷似していた。この女性は転居するとき、愛着がのあった庭のすべての植物を捨て、たった一本のアジサイだけを持ってきた。その三年前・・・山本 武臣(著)「あじさいになった男」
「執着」は、「しゅうちゃく」あるいは「しゅうじゃく」とも読み、もともとは仏教用語です。
仏教において「執着」は「事物に固執しとらわれること」で修行の妨げになるため執着を断つことに挑戦しなくてはいけないとされています。
この仏教の教えから、現代でも「執着」は「ある物事に心をとらわれてしまい、そこから離れられない」心理状態を指し、日常生活や人間関係などに支障が出ているときに用いられる言葉です。
「執着」の対象は「人、物、お金、地位、プライド、容貌、過去」など、人によって様々ありますが、特定のものに強いこだわりを持つと、それが「執着」になります。
つまり、「自身の持つこだわり」や「自分の心の持ちよう」にフォーカスされている表現です。
「執着」は時に自身を前進させる原動力になる一方で、過度に執着するとストレスや不安を引き起こすという二面性を持っています。
例えば、恋愛に対して深い執着を持つことは、相手に対する愛情の表れとして理解されることがありますが、「この人のことを全て知りたい、何をしているのか把握していないと気になって仕方がない」と、過度な執着になると関係を悪化させる要因にもなりかねません。
「愛情」と「執着」はどちらも他者に対する心情を表しますし、例の通り、恋愛中「相手を思う気持ち」が、「執着」なのか、それとも「愛情」なのかは、境目はわかりにくいところです。
ただし、「愛情」と「執着」は、気持ちの向いている方向が違います。
「愛情」が他者に対する深い思いやりやいつくしみという「相手のために向けられる」感情であるのに対し、「執着」は自分の強いこだわりで固執している「気持ちが自分自身に向いている」状態です。
「執着」の例
- ・・・ず、やむなく藤野新一郎を逮捕し、送検しただけのことなのだから、さほど本件に対する執着がないのだろう。 尾関検事は質問をつづけた。 「貝塚さん。本件被害者である芦原真・・・和久 峻三(著)「あやかし法廷」
- ・・・れないでいる。真如法親王も恒貞親王もかつては父であったかもしれないが、父の子への執着結局は自分の再生である。帝位という世間最高の形での再生がかなわなくなった二人に・・・三枝 和子(著)「淳和院正子」
- ・・・の文学の動力だったのかもしれないと思った。母の愛への飢えが、若い女性への根強い執着となって現れたのではないかしら? こんなところで、自分を引き合いに出して考えるの・・・臼井 吉見(著)「事故のてんまつ」
「愛情」「愛」「依存」「愛着」「執着」の違いまとめ
- 「愛情」は、大切な対象を「深く愛し」「いとおしく大切に思う」気持ちを表す言葉で、対象に対して愛する気持ちを持っているときに使う言葉です。
- 「愛」と「愛情」には、「特定の相手をいとおしく思う心」「いつくしむ心」という共通する意味があります。一方、言葉の使い方には違いがあり、「愛情」は具体的な対象に使いますが、「愛」は具体的事物から抽象的な対象まで広く使います。
- 「依存」と「愛情」は、対象に対する思いはありますが、対象との関係性に違いがあります。「依存」は「対象に頼らないと自分が成り立たない、対象と離れられない」関係性です。
- 「愛着」は、「愛情」と同じように特定の対象に対して愛する感情がありますが、「愛着」はある程度の期間の関係を経たことで離れがたいと思う気持ちが生じている状態です。
- 「執着」と「愛情」はどちらも他者に対する心情を表します。ただし、「愛情」が相手のために向けられる気持ちであるのとは違い、「執着」は、自分の強いこだわりのために固執している状態なので、「自分の心の持ちよう」次第で変わるともいえます。
参考文献
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 監 林 四郎 編 篠崎 晃一 ・相澤 正夫・大島 資生(2021)『例解新国語辞典』第十版, 三省堂.
- 編 柴田武・山田進 (2002)『類語大辞典』講談社.
- 編 藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光 (2011)『漢字源』改訂第五版, 学研.
- 著 鎌田正・米山寅太郎(2013)『新漢語林』第二版, 大修館.
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月4日).
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月4日).