「粗方」とは?ビジネスで使える?
「粗方」は、「あらかた」と読み、「全部ではないけれどほぼ全部」という割合を表す言葉です。
大雑把に全体を見る場合に用いられ、細部は確認していないニュアンスで使われます。
ビジネスシーンなどで使うことは可能ですが、正確な数値や情報が必要な際に使うのは不適当でしょう。
- 苦手だったこともあり物理の授業の内容は粗方忘れて覚えていない。
- 彼が休みの日に家にいない場合の行き先は、粗方の見当がついていた。
- 後だとバタついて嫌だから、思いついたときに粗方やっておく。
- 給料をもらった一週間で、粗方のお金を使ってしまった。
などのように使われます。
「粗方」の「粗」には「おおざっぱ、ほぼ、だいたい」という意味がありますから「粗方」は、「ほぼ全部に近い状態」という意味で使われます。
また、「粗方」は、「大雑把にみたところの数量であること」「物事をざっと全体的に見たときの大半」という意味ですので、正確な数値や情報を示すときには使いません。
たとえば、会議や交渉などの場面で、業績や売り上げを正確に数値化して伝える際などは、「粗方」という言葉は避けましょう。
また、「粗方」は「ほぼ全部ではあるが全部ではない」ということを念頭に置くことも必要です。
たとえば、「水害に遭った地区の粗方の片付けが終わった」と言う場合、裏を返せば「片付けが終わっていないところがある」ことになります。
「粗方が終わった」と言うと、「片付けが終わっていない少数はまぁ置いておいて」といったニュアンスが逆説的に生まれ、少数派の感情を逆撫ですることもあります。
細かい気遣いを求められる立場で発言する際には、使い方に注意が必要です。
「粗方」の類義語は、「大体」「ほとんど」「大方」などがあります。
「粗方」の使い方




「粗方」の例文
- ・・・で死別」 茜は、戒の言葉に時おり混じる鼻濁音を思い出す。二年間の俳優養成所通いで粗方は直ったが、それでも妙な所に時々顔を出す。整いすぎて冷たい感じがしないでもない戒・・・藤本 ひとみ(著)「綺羅星」
- ・・・さて、何から話していいでしょうか。あなたは私と毛沼博士との奇しき因縁については、粗方御存じだと思います。 ・・・甲賀 三郎(著)「血液型殺人事件」
- ・・・日本内地から爆薬を、一番安く踏み倒おして買うのが、あのお屋敷なんです。粗方一本七十五銭平均ぐらいにしか当りますまい。 ・・・夢野 久作(著)「爆弾太平記」
- ・・・文学者と云ふより、歌学の伝統を守る者、と云ふ方がよい位だ。其最後に出て、歌学の伝統を粗方と集大成したのは、藤原俊成である。 ・・・折口 信夫(著)「女房文学から隠者文学へ 後期王朝文学史」
「粗方」「大体」「大方」の違いは?

「粗方」「大体」「大方」のそれぞれの違いを見ていきましょう。
3つとも類義語で、共通するのは、「ほとんどすべて」という意味です。
「粗方」は「全部ではないけれど、ほぼ全部」という意味で、「大雑把に見たところでは」というニュアンスがあり数という単純な情報をもっとも早く把握していると言えますます。
「大体」は「だいたい」と読み、「物事の要点や数量などを大づかみに捉える様子」「細かいところは除いた主要な部分」を指す言葉でもあり、「概ね」の意味合いや、「約、およそ」の意味合いで使います。
「粗方」は数をざっと把握していますが、「大体」は全体の中の重要なポイントをつかんでいるニュアンスがあります。
たとえば、「その提案は大体理解できた」と言うのは、概ね主要な部分は理解した、という意味になりますし、「大体500人いた」は「およそ500人」と言い換えることができます。
また、「大体」には、「総じて」という意味や、「元はと言えば」という意味もあり、「大体彼はいつも遅刻する」「有給の少なさに大体皆不満を感じている」などのように、使います。
「大体」の例
- ・・・れは正しい。そして、僕はいつも料理をしない、させ無い彼女の料理を止めた。それも、大体予測は付いて居た。けれども、彼女が僕に求めて居たのは、自分自身でかなりの事が出来・・・橘 基緒(著)「冗談」
- ・・・「ちょいと、キャプテンさん、副長さん。この酔っ払い小僧を何とかして下さいな。大体何だって、このあたしが、エーリアンと手を組んでシーラカンス号に忍びこんだりしなき・・・栗本 薫(著)「エーリアン殺人事件」
- ・・・に入らなかったのと違いますか」 彼女は、知人に野鳥観察を専門にしている人がいて、大体の様子を話したら、やはりそれはインコだろうと言われた、と報告してくれた。飼鳥のイ・・・阪田 寛夫(著)「菜の花さくら」
「大方」は「おおかた」と読み、「粗方」と同様、「物事の大部分、ほぼ全部」と言う意味があります。
ですから、ある物事のだいたいのこと、あらましが分かった時、「大方理解した」などと表現します。
また「大方」には「普通の物事、世間一般の人」という意味があります。
例えば、世間一般の人の意見を聞きたいと思うとき、「大方の意見を聞きたい」や「大方の意見は増税に反対です」などと表現できます。
さらに「大方」には「おそらく」という実現の可能性の強いことを推測する使い方もあります。
「おそらく、いつものように寝坊をしただろうと予想する」とき、「大方寝坊に違いない」などと、表現することができます。
「大方」の例
- ・・・までのところまだ得られていない。この一年間、同氏は、「例のあの人」が死んだという大方の希望的観測を否定し、実は再び権力を握るべく仲間を集めている、と主張し続けていた・・・J・K・ローリング(著)/ 松岡 佑子(訳)「ブハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」
- ・・・については、意味の有契性に基づいた原義から派生義への派生関係であるとする見解が、大方の所で一致する。それは、築島裕(一九六四:184)の“「多義語」における語の意味・・・松中 完二(著)「現代日本語講座 第4巻」
- ・・・、津田宗左衛門是斎の名から来たものらしい。 これから夏へ向う季節でもあり、旅人の大方が店に立ち寄って買い物をしている。 治助が買いに行き、戻って来たのをみると、けっ・・・平岩 弓枝(著)「はやぶさ新八御用旅 東海道五十三次」
「粗方」「大体」「大方」の違いまとめ
- 「粗方」「大体」「大方」は共通して、「ほぼ全部」という意味を持つ類義語です。
- 「粗方」は、大雑把に全体を見たところではというニュアンスがあり、正確とは言えないが数の情報をもっとも早く把握しているときに使います。
- 「大体」は、全体の中の重要なポイントをつかんでいるというニュアンスがあり、数量ではなく、内容の把握もしている意味合いがあります。
- 「大方」には、「世間一般的な基準や常識的な基準」という意味があります。
参考文献
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 監 林 四郎 編 篠崎 晃一 ・相澤 正夫・大島 資生(2021)『例解新国語辞典』第十版, 三省堂.
- 編 柴田武・山田進 (2002)『類語大辞典』講談社.
- 編 藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光 (2011)『漢字源』改訂第五版, 学研.
- 著 鎌田正・米山寅太郎(2013)『新漢語林』第二版, 大修館.
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月20日).
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月20日).