「行脚」とは?意味・読み方や類義語は?
「行脚」は、「あんぎゃ」と読み、「僧が仏道修行のため聖地や名僧を尋ね、歩き回ること」を意味する仏教用語ですが、そこから仏教以外の分野にも浸透し、「何らかの目的でいろいろな場所をめぐり歩くこと」という意味でも用いられます。
- 旅先で行脚するお坊さんに出会った。
- セミナー講師として日本全国を行脚している。
- 私の祖父母は旅行が趣味で、元気にあちこちを行脚している。
- キャンペーンで全国のCDショップを行脚する。
などのように使われます。
先述のとおり、「行脚」はもともと仏教用語ですが、このように各地を歩き回る修行僧のことを「行脚僧(あんぎゃそう)」、「雲水(うんすい)」「遊行僧(ゆぎょうそう)」などと言いました。
「行脚」の読み方は唐音(とうおん)で、「行(あん)+脚(きゃ)」ですが、日本語の「連濁(れんだく)」で、「あんぎゃ」と、濁った発音になりました。
また、「行脚」は字の通り、仏教の修行や布教をおこなうために僧侶たちが「脚(あし)」で歩いて「行(い)」く、ものでしたが、時代の変遷とともに、車や電車など、ほかのさまざまな移動手段でも使われるようになりました。
「行脚」の類義語には、「遊行」「巡回」「周遊」などがあります
平安時代の僧侶・西行(さいぎょう)や江戸時代の俳人・松尾芭蕉(ばしょう)などの旅が「行脚」して諸国を回った代表例と言えるでしょう。
実際、松尾芭蕉は「おくの細道」に、「ことし元禄ふたとせにや、奥羽長途の行脚ただ仮初と思い立ちて(今年は元禄二年だとか。このみちのくへの行脚も、ただなんとなく思いついたまでのことだった)」と書き、僧侶の姿をして旅をしたそうです。
また、「おくの細道」は、単なる旅の記録ではなく、芭蕉にとっては憧れた西行の足跡をたどるための旅で、芭蕉の人生観や自然への敬意、歴史への思いが詰まった作品と言われています。
「行脚」には、物理的な移動としての旅、というだけでなく、聖地巡礼による歴史や文化の理解、そして自己探求や精神的な成長の旅という意味合いもあります。
「行脚」の使い方




「行脚」の例文
- ・・・ざる者である。それでなければ坊主の慣用する手段を試みるがよい。一所不住の沙門雲水行脚の衲僧は必ず樹下石上を宿とすとある。樹下石上とは難行苦行の為めではない。全くのぼ
- ・・・次男坊で肌合の変っていた三四郎は、W大学の英文科を卒えると、教師になって軽々諸国行脚の途についた。なんでも文学を志したというのだが、いまだ志成らずして、私とH市で落
- ・・・を紹介するためではない。 そうした文学的なこととは別に、山頭火が家を捨てて、乞食行脚のように各地をさ迷った背景について、成程、と思うことがあったからである。 たまた・・・渡辺 淳一(著)「風のように・嘘さまざま」
- ・・・た日などは、「さくらちる目の前まつくろ」(原句・さくらちる富士がまつしろ)、競輪行脚をしていた頃は、「風ふかんでも一文もない」(同・風ふいて一文もない)などと詠んで・・・最相 葉月(著)「なんといふ空」
ビジネスの「お詫び行脚・謝罪行脚」とは?

ビジネスで「行脚」を使う場合は、仏教修行の意味ではなく、「いろいろな地方を巡り歩く」「いろいろなところへ行く」といった意味で使われます。
特に、ビジネスシーンで多く使われるのが「お詫び行脚」です。
「お詫び行脚」は「お詫びのために各方面をめぐる」という意味で、「謝罪行脚」と同義語です。
仕事でミスをして、取引先やお客様、あるいは社内のいろいろな人に迷惑をかけたとき、相手の会社や自宅などを訪問したり、各人のところを一人ひとり回ったりして、お詫びを伝えることです。
また、政治家が不祥事を起こした時など、「選挙区にもどってお詫び行脚をする」こともあります。
いずれにしても、謝ってまわる意味ですが、迷惑をかけた人物や会社一件一件に謝りに行くということで、相当な労力で大変であろうと想像できます。
また、日本社会においては、誠意を示すためには直接対面で謝罪を行うことが重視されているため、特にビジネスにおける「お詫び行脚」は信頼回復や関係修復のために必要な手立てとも言えます。
つまり、「お詫び行脚・謝罪行脚」は、それをすることで、ミスや問題行為などに対する反省の姿勢を示し、相手の気持ちに寄り添う行為として受け取ってもらうことができるのです。
参考文献
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 監 林 四郎 編 篠崎 晃一 ・相澤 正夫・大島 資生(2021)『例解新国語辞典』第十版, 三省堂.
- 編 柴田武・山田進 (2002)『類語大辞典』講談社.
- 編 藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光 (2011)『漢字源』改訂第五版, 学研.
- 著 鎌田正・米山寅太郎(2013)『新漢語林』第二版, 大修館.
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月26日).
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月26日).