「安閑」の意味は?読み方や類義語・対義語
「安閑」は、「あんかん」と読み、「何もせずにのんびり落ち着いた様子」を意味します。
ただし、「本来は何かすべき時に何もしない」という「のんびり」していることを咎(とが)めるような意味合いがあり、否定的なニュアンスで使うことが多いです。
- 勉強すべき時に悪い友達とつるんで安閑といい気になっていた。
- その戦いもいつかは終わるだろうが、それまで安閑と待ってはいられない。
- 彼の性格からいって、その地位に安閑としていられるわけないだろう。
- こんな状況で、安閑として大きなイビキをかいているとは呆れる。
などのように使われます。
「安閑」の「安」には、「やすらか」、「閑」には「ひま、静かに落ち着いている」などの意味があり、「安閑」は「のんびりしている」様子を表す言葉です。
このように「安閑」は、落ち着いた様子のことを指しますが、「安閑としてはいられない」と使われることが多い言葉です。
つまり、「安閑」は、のんきすぎるとか危機感の無さを暗に指摘され、上述のように否定的な意味合いで使われることが多いです。
「安閑」の類義語には、「安逸」「お気楽」「安気」などがあります。
「安閑」の対義語・反対語には、「営々」「がむしゃら」「脇目も振らず」などがあります。
また、「安閑恬静」という四字熟語があり、「あんかんてんせい」と読みます。
「安閑」と「恬静」はどちらも心安らかで静かな様子を意味しますから、「安閑恬静」は「問題や心配事などがなく、ゆったりとした静かな様子」のことを指します。
例えば、「田舎で安閑恬静な暮らしがしたい」という場合、「心穏やかなのんびりとした暮らし」を指し、「安閑恬静」は否定的な意味合いではあまり使われません。
「安閑」の使い方




「安閑」の例文
- ・・・格を得ていたので以前よりずっと多くなったが、ブルックナーは、それだからといって、安閑と生活していたわけではなかった。それどころかブルックナーは、前より以上に勤勉にな
- ・・・てきたことがある。 人里離れた山荘の生活は、望東尼の庇護のもとにあっても、決して安閑というわけではない。長州俗論党政府に追われる亡命者である。福岡藩もまた因循家が要
- ・・・われているのが、急に頭の中で増幅され、鳴りひびいてきた。 民間人だから―といって安閑としてはいられないのかもしれない。捜査会議という公の場での発言ということになれば・・・内田 康夫(著)「御堂筋殺人事件」
- ・・・超え、七一年にはアメリカに追いつき、追い越してしまった。 こうなると、アメリカも安閑としてはいられない。しかし、ベトナムで疲れはてたアメリカは、売られた「けんか」を・・・森本 良男(著)「冷戦・人と事件 核をめぐる激動の50年」
「安閑無事」とは?

「安閑無事」は、「あんかんぶじ」と読み、「平凡で何もない日々、つまらない毎日にこそ価値がある」という意味です。
「安閑無事」は禅語(禅宗の悟りの境地を短くまとめた言葉)で、「平穏無事に過ごせるのは幸せ。何事もないことに感謝の気持ちを持つ」という教えで、シンプルで前向きになれる言葉です。
現代は、SNSで他人のキラキラした生活を見たり、勝手に他人と自分を比較したりして、なにも変わらない毎日を送っている自分に落ち込んでしまう人も多いようです。
キラキラした日ばかりを望んでしまい、何もない日々を平凡でつまらないと考えてしまいがちですが、上述のように「安閑無事」は、安らかで平穏な日常は本当に貴重で、大きな変化を求める必要はないということを教えてくれています。
実際、家族がいる、家族がいなくても食べられる、空気がある、お布団で寝られる、字が読める、話し相手がいる、話し相手がいなくてもネットや本がある、など世間の常識とは違ったとしても自分なりのたくさんの幸せに囲まれているのです。
現代の競争社会やSNSの影響などで、他人と比べがちですが、「安閑無事」の精神が、心穏やかに過ごせるコツになりうると思われます。
「安閑」「安穏」の違いは?

「安閑」「安穏」のそれぞれの違いを見ていきましょう。
2つに共通するのは、「静かで落ち着いている」という意味です。
「安閑」は「のんびりしている」様子を表す言葉ですが、それがむしろ危機感を感じられない批判的なニュアンスが強く、否定的に使われることが多いです。
「安穏」は「あんのん」と読み、「大きな変化がなく、心が安らかで落ち着いている状態」を表す熟語です。
「安穏」は「あんおん」とも読めますが、「あん + おん 」の連声 (れんじょう) で、「あんのん」と読みます。
また、「安穏」は、仏教用語ではありませんが、鎌倉時代の僧・親鸞は「世の中安穏なれ、仏法弘まれ」と手紙に書いており、宗教と言えば個人の心の問題に焦点を当てがちですが、親鸞聖人は社会全体の安穏に目を向けていました。
そして、それ以前の平安時代の文学や詩の中でも「安穏」という言葉は頻繁に取り上げられ、当時の人々が求める理想的な生活の象徴として「安穏」は描かれていたようです。
つまり、「安穏」は、単に心がおだやかな状態だけではなく、日常生活が安定しているとか物事が順調に進んでいる様子を指し、社会的にも望ましい安定感や安心感を含む言葉といえます。
「安穏」の例
- ・・・割を担うことを恐れ、働きかけをしないよう、避けている。僕たちは、平穏無事に、ただ安穏と生きていければ良い、毎日が楽しければ良い、美味しいものが食べられれば良い、自分・・・森 博嗣(著)「四季」
- ・・・州土着の豪族や、半世紀近く益州に住みついている劉焉の旧部下たちのなかには、天府に安穏と暮らすことだけを願い、北伐には賛成しない者もいた。だが、そのままでは、いずれ魏・・・陳 舜臣(著)「エッセイで綴る中国の歴史」
- ・・・、なにかがあると刺激されて死を多少身近に考えるが、しばらくするとまた忘れ、毎日を安穏に暮らして四十三年が過ぎた。 もちろん、死ぬことは怖い。死にたくはない。まだまだ・・・玉村 豊男(著)「雑文王玉村飯店」
「安閑」「安穏」の違いまとめ
- 「安閑」「安穏」は共通して、「静かで落ち着いている」状態を表しています。
- 「安閑」は、「のんびりしている」様子を表す言葉ですが、それがむしろ危機感を感じられない批判的なニュアンスが強く、否定的に使われることが多いです。
- 「安穏」は、「大きな変化がなく、心が安らかで落ち着いている状態」を意味し、それは、安心感、安定感があるという社会的にも肯定的な意味合いを持ちます。
参考文献
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 監 林 四郎 編 篠崎 晃一 ・相澤 正夫・大島 資生(2021)『例解新国語辞典』第十版, 三省堂.
- 編 柴田武・山田進 (2002)『類語大辞典』講談社.
- 編 藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光 (2011)『漢字源』改訂第五版, 学研.
- 著 鎌田正・米山寅太郎(2013)『新漢語林』第二版, 大修館.
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年11月25日).
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年11月25日).