「暗喩」とは?意味・読み方や類義語・対義語は?
「暗喩」は、「あんゆ」と読み、「〜のようだ」「〜みたいだ」などの言葉を使わずにものをたとえる表現技法のことを指します。
例えば、「彼女は太陽のような人だ。」とするのではなく、「彼女は太陽だ。」と言い切るのが暗喩です。
- 詩には多くの暗喩が用いられているので理解しにくい。
- 「ガラスの心」は、傷つきやすさや壊れたらなかなか立ち直らないことを、ガラスで暗喩した表現だ。
- まだ幼く、彼には暗喩表現が理解できない。
- 暗喩や隠喩は遠回しに物事を表現する手法だが、「彼は鬼だ」など、表現はかなりストレートに言いきる。
などのように使われます。
「暗喩」は、「ひそかに、目につかぬところで」という意味の「暗」と、「例える」という意味の「喩」の二つが組み合わさり、「ひそかに例える、暗に例える」という意味合いがあります。
つまり、「暗喩」は、比喩(ひゆ)表現の一種で、比喩であることを隠した比喩とも言え、物事を伝えるときにその物事を伏せて別の何かで言いあらわす技法のことを指します。
具体的には「~みたいな」「~のような」という表現を使わずに、物事を例える表現方法です。
例えば、「身体に電流が走る」「彼は歩く辞書だ」などがありますが、実際に感電はしていないし、辞書になってもおらず、それぞれ、「一目惚れ」「知識の豊富さ」を例えた暗喩表現です。
ですから、上記例のように、「暗喩」は表現技法の一つとして、なにかしらの文章や物事を伝えるときに使われ、「これは暗喩だ」と解釈、判断することはあっても、「暗喩」という言葉自体は、日常生活の中ではあまり使われません。
また、「暗喩」表現は、分かりやすく伝わったり、強調されたり、とても効果的ですが、あまり多用すると文章が大げさになったり、例えが分かりにくく読み手を混乱させたり誤解を招いてしまうという危険もはらんでいるとも言えます。
どちらかといえば文学に使われることが多いので、「暗喩」表現をビジネス関係の文書に使うのは控えた方がいいでしょう。
「暗喩」の類義語には、「比喩」「隠喩」「メタファ」などがあります。
「暗喩」の対義語には、「直喩」「明喩」などがあります。
「暗喩」の使い方




「暗喩」の例文
- ・・・主)の配偶の選択と、夫婦の和合について、つがいで仲良く鳴き交わす雎鳩(みさご)を暗喩として、君子の夫婦和合がうまくいくことが天下太平の象徴である、この歌はその頌歌で・・・劉 向(著)/ 中島 みどり(訳)「列女伝」
- ・・・啓示であり、救霊を求める先祖霊からの発信であり、そして時には未来で起きる出来事の暗喩だという。 ここで興味深いのが、現在、我々が崇めたてまつる世界的に有名な神や歴史・・・ひろた みを(著)「にっぽん新・新宗教事情」
- ・・・いいたかったが、なんの言葉も思いつかなかった。ただわかったのは、自分もまた金をなにかの暗喩にして生きているということだった。目のまえに・・・田柳 美里(著)「女学生の友」
- ・・・あまりにも唐突だし、表現としても不親切ではないかと私は思った。プルーストの作品群の暗喩として長い廊下を引用するのであれば、それはそれで私にも・・・村上 春樹(著)「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
「暗喩」「隠喩」「直喩」の違いは?

「暗喩」「隠喩」「直喩」のそれぞれの違いを見ていきましょう。
「隠喩」は「いんゆ」と読み、「比喩言葉を用いず、他のものに例える」比喩表現で、「暗喩」と同一の意味なので、「暗喩」と「隠喩」はどちらを使っても問題ない言葉です。
つまり、「隠喩」も「暗喩」と同じく、「~のような」「~みたいな」といった言い回しを用いず、対象となるものの特徴を他のもので表現する方法であり、意図的に言葉の裏に意味を隠し、その解釈を読み手に委ねるとても高度で繊細な表現技法です。
このような「隠喩」は、一度読んだだけでは簡単に分からないようにしているからこそ、読み手に「ン?」と思わせ話題に注目させたい時に便利です。
そのため、以下のように企業のキャッチコピーにも「隠喩」は使われています。
- お口の恋人(ロッテ)
- 味の作曲家(日本食研)
- 駅前留学(NOVA)
- 明日の空へ、日本の翼(日本航空)
- 丸くなるな、星になれ(サッポロビール)
つまり、「あえて分かりづらく伝えてから注目をひき、その真意を明確にする」ことが出来るのが隠喩です。
「隠喩」の例
- ・・・ている。人知の限界すれすれの空間で体験される、物理的現象としての光は、早朝の空の隠喩に託して表現されて、人間の匂いを与えられている。 「雲海の裂け目」が私に「神曲」・・・須賀 敦子(著)「本に読まれて」
- ・・・た。 「アラビアやペルシアの詩に勝るものがないというのは本当だ。イスラムの詩人が隠喩をみごとに使いこなしていることには異論の余地がないからな」 「こんなことを言った・・・ジルベール・シヌエ(著)/ 阪田 由美子(訳)「サファイアの書」
- ・・・はロンゴバルディによって、「道士の教派の創始者老子も老子経という著作で次のような隠喩に富んだ数と用語を用いて世界の生成を説明している。道即ち最初のカオスが太極即ち二・・・堀池 信夫(著)「中国哲学とヨーロッパの哲学者」
「直喩」は「ちょくゆ」と読み、「暗喩、隠喩」とは対義語で、「~のような」「~みたいな」「~のごとし」「さながら」「あたかも」などの語を使って、ある物事を他の具体的な事物にたとえて表す技法です。
例えば、「天使のような寝顔」というように、「のような」や「みたいな」を使い、置き換えていることを明示している表現方法のことです。
つまり、明らかに比喩と判断できる言い回しを用いる比喩表現で、「明喩(めいゆ)」と同義です。
他にも、「瀧のように汗が流れる」「餌に群がるカラスのごとく集まってきた」など、「ようだ」や「ごとし」の決まり文句がついていることで「これは例えだな」と誰でも判断できます。
「直喩」を使うと、相手に具体的なイメージを伝えることができ、相手はその物事や説明されているものの特徴が具体的でわかりやすくなります。
「暗喩・隠喩」は、あえて分かりにくく伝えて強く印象付けたいときにも使うため、読み手側の裁量に委ねられる技法ですが、「直喩」は、だれが読んでも理解できるように説明したいときに使える技法と言えます。
「直喩」の例
- ・・・ネイティヴの動きまわりは西洋文明に対抗するものとしての自然界における文字どおりの直喩ではない。そうではなくネイティヴらしい動きまわりとは、ネイティヴが空間を動くこと・・・ジェラルド・ヴィゼナー(著)/ 大島 由起子(訳)「逃亡者のふり ネイティヴ・アメリカンの存在と不在の光景」
- ・・・からドアをばたんと閉める大きな音までのあらゆる音になぞらえられてきたが、それらの直喩はすべてその特殊な音響にふさわしくない。心に突き刺さって忘れられない音。わたしが・・・テッド・サクリー・ジュニア(著)/ 高橋 豊(訳)「片目の説教師」
- ・・・を好んで用いているが、全体的に文語と口語のテルグ語をほどよく混用している。素朴な直喩やたとえ話や格言は数えきれない。その結果、彼の表現は常に具体的で、直接的で、自然・・・R・A・ジャヤンタ(著)/ 井上 貴子(訳)「楽聖たちの肖像 インド音楽史を彩る11人」
「暗喩」「隠喩」「直喩」の違いまとめ
- 「暗喩」「隠喩」「直喩」は、ある物事を別の何かに見立てる比喩表現の技法です。
- 「暗喩」と「隠喩」は同じ意味をもつ比喩表現で、「~のような」といった比喩言葉を用いず、ものを例える技法です。
- 「直喩」は、「暗喩・隠喩」とは対義語で、「~のような」「~みたいな」などの語を使って、ある物事を他の具体的な事物に例えて表す技法です。
参考文献
- 編 山田忠雄・柴田武・酒井憲二・倉持保男・上野善道・山田明雄・井島正博・笹原宏之 (2012)『新明解国語辞典』第七版, 三省堂.
- 監 林 四郎 編 篠崎 晃一 ・相澤 正夫・大島 資生(2021)『例解新国語辞典』第十版, 三省堂.
- 編 柴田武・山田進 (2002)『類語大辞典』講談社.
- 編 藤堂明保・松本昭・竹田晃・加納喜光 (2011)『漢字源』改訂第五版, 学研.
- 著 鎌田正・米山寅太郎(2013)『新漢語林』第二版, 大修館.
- 編 松村明・三省堂編修所(2019)『大辞林』第四版.三省堂.
- 公益財団法人日本漢字能力検定協会.「漢字ペディア」.<https://www.kanjipedia.jp/>(参照日2024年12月6日).
- 小学館.「デジタル大辞泉」. <https://dictionary.goo.ne.jp/jn/>(参照日2024年12月6日).